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2011-8 COSMOS集
※森重香代子 選

「仕事モード」

仕事場の車庫に残れる社用車が<俺の出番はまだか>と待ちをり





酒臭き男近づく残業を終へて十時の電車を待てば





ホームより動き出したる鈍行のテールランプの赤遠ざかる





引きずれる仕事モードを断ち切らん電車の中で歌集をひらく





精神科待合室の窓に見ゆる木々の緑にくつろぎてゐる






一首目
歩いて営業に出ると、車庫を見れば車が一台ぽつんと残っていた。まるで、出番を待っているかのようだった。



二首目
残業を終えて、帰りの電車を待っていると、酒の匂いをさせた男が僕の隣にならんだ。こいつが酒飲んでるときにも僕はしっかり仕事をしていたんだ、という変な自負を感じて詠んだ歌。



三首目
電車を待っていたら、向かいのホームに普通列車が入ってきた。各駅停車の電車だ。しばらくするとゆっくりと動き出した。僕はずっとその行方を追っていた。



四首目
帰りの電車の中でもついつい仕事のことを考えてしまう。そして、必要のない不安に駆られる。そんなとき、セカンドバッグに忍ばせた歌集をひらき、しばし、歌の世界に浸る。ちなみに今、読んでいるのは、岩波文庫の「北原白秋歌集」。



五首目
その精神科の診療所は患者にリラックスできるように配慮されているようだ。大きな窓の外には木々の緑があざやかだった。まるで借景だ。うまいつくりだと思いながら思わずくつろいでしまった。




今回は、久しぶりの特選だった。二年ぶりではないだろうか。旧仮名で詠んでから初めての特選だ。うれしい。作品の方は、職場詠が増えてきた。やはり、営業は変化が激しい分、刺激も多い。いろんなところを訪れ、いろんな人に会う。それが歌作につながる。面白い。これからも、どんどん詠んでいこうと思う。




# by take04ex | 2011-08-20 07:53 | コスモス短歌会

2011-7 その二集
その二集 ※小島ゆかり 選

審判の講習受けしその日より野球見るたび塁審を追ふ






ギター弾き歌ふ男の太きこゑ深夜の駅の通路に響く





白マスク顔半分を覆ひたり喜怒哀楽は目ぢから頼み





一首目、
9歳の息子が小学1年の3月から、町内の少年野球チームに入っている。
町内のチームといえば、お父さん、お母さんの手伝いなくしては成り立たない。
そこで、お父さん達は、少年野球連盟の「審判講習会」を受けねばならないのだ。
そんなわけで、ナイターを見ても、高校野球を見ても、審判の動きが気になるのである。




二首目、
仕事帰りに仲間と飲んで帰る途中、駅の通路でストリートミュージシャン達が歌っていた。
なかでも、野太い声を張り上げて歌う男性シンガーがいて、思わず見とれてしまった。
声ができている!腕に覚えのあるヤツに違いない。彼は、いつも歌っているのだろうか。




三首目
風邪が流行っていた時期。マスクをつけて職場へ通った。鏡で見れば、マスクで顔半分が覆われている!笑ってみたり、怒ってみたり、そんな表情を繰り返すうちに、目で訴えないと伝わらないことに気づいた。便利なマスクの不便さを知った。





# by take04ex | 2011-08-20 07:44 | コスモス短歌会

2011-6 その二集
桑原正紀 選

被災地へ歌と言葉の励ましを送るラジオの音あたたかし





被災者の気持ち思ひて黙読す与謝野晶子の震災の歌





競争の激しき営業職につく戦地に赴く気持ちとなりて





バラの香を残して我を追い越しし女のうしろすがたを見つむ




一首目
東日本大震災を詠んだもののひとつ。
震災直後のラジオ番組も特番が流れていて、震災の報道の合間に被災者へ送るメッセージや被災者のためにリクエストされた音楽が流れていた。いちばん印象的だったのが、被災した子ども達へとの言葉とともに流れた「アンパンマンマーチ」だった。



二首目
被災者の気持ちに寄り添うにはどうしたらよいかと思っていたとき、岩波文庫の「与謝野晶子歌集」に関東大震災の頃のことを詠んだ歌が載っていたことを思い出した。晶子も被災者のひとりだったのだ。晶子の歌を通して、被災者の気持ちを思った。



三首目
この四月より、営業職につくことになった。二年ぶりの営業。あれから更に景気は後退している。ましては、人員削減で不安は募るばかり。しかも、取った取られたの競争も激しい。しかし、実際、現場に出てみないとわからない。そんな心境を詠んだ。



四首目
地下鉄を降りて、改札への階段を上がるとき、ぼくを追い越していった女がいた。追い越しざまにバラの香がした。どんな人かと思い、そのうしろすがたを目で追った。すらりとのびた背丈の高い髪の長い女。美人かどうかはわからない。今月の五首に選ばれた作品。




この四月から人事異動で久しぶりに現場にでることとなった。人員削減で毎日が忙しく、しかも、町内の子ども会の仕事も多忙となり、更新が遅れてしまった。これからも、このようなことの連続だろうから、手のあいたときにまとめて更新することになると思う。



# by take04ex | 2011-08-20 07:29 | コスモス短歌会

2011-5 その二集
影山一男 選

日曜の夕のいふうつ吹き飛ばすオレンジ色のでつかい太陽





「氷」の字横にずれたる「氷山」の文字はあらはす地球の危機を





「昼飯に行ってくるよ」と言ひしまま行方不明の部長と課長




てのひらで水子地蔵を磨きゐる幼女は覗かすお姉ちやんの顔





一首目、疲れた日曜の夕方、明日から仕事か…と思いながら車を走らせていた時に目に飛び込んできた大きな夕陽を詠んだ。

二首目、息子が書いた毛筆の字「氷山」。しかし、なぜか、「氷」の字が左にずれていた。「山」から落ちそうな「氷」。まさに、地球温暖化の象徴のように見えた。

「今月の五首」に選ばれた作品。寺山修司の<新しき仏壇買ひに行きしまま行方不明のおとうとと鳥>の本歌取りを試みた。まだ、中堅社員だったころに何度かあった光景。




本歌取りが成功したようだ。
もっと、いろんな歌を読んで、また、挑戦してみたい。

宮柊二先生の歌集を読んでいる。
ずいぶん前に読んだのだが、どうも分かりにくくて、そのままにしておいた。
「宮柊二とその時代」(小高賢 著)「鑑賞・現代短歌 宮柊二」(高野公彦 著)を読んで、彼のバックグラウンドを知り、その上で、作品に手をのばした。「山西省」という、中国を転戦していたときのことを作品にまとめたものが、戦争の生々しさが伝わってきて、スゴイと思った。(読んでいるのが、宮柊二歌集・岩波文庫なので、一部しか読めていないが)学校の教科書に是非、取り上げて欲しいと思った。
# by take04ex | 2011-05-08 12:06 | コスモス短歌会

コスモス2011-4 その二集
※木畑紀子 選


鷹一羽つばさ広げて天かける師走の渋滞見下ろしながら





斜めから向かひ来る雪 傘の下くぐりて積もる我のからだに





元日に彩り添へる御節には見向きもせずに餅食ぶる子ら







クリスマスの頃から、正月にかけての作品。
一首目は、市街地の空を自由に飛んでおる鷹の姿を描いてみた。
二首目は、斜めから降って来る雪。雨と違って、コートに降り積もってゆく様。
三首目は、御節には全く興味を示さずにお餅ばかり食べていた子どもたちを詠んだ。

職場事務所までの徒歩通勤中の歌が多くなってきた。
一首目は、まさにその歌。
ふと、空を見上げると、車道の渋滞のいらいら感が歩行者のこちらまで伝わってくるというのに、鷹はざまあみろといった感じでなんにもない青空を飛んでいる。自由に対する羨ましさがこの歌を生んだ。

# by take04ex | 2011-04-10 06:57 | コスモス短歌会

コスモス2011-3 その二集
※狩野一男 選



ひさかたの光のなかを舞ひ落ちる枯葉よ最期の輝きみせて





こうえふの中にあをばを見つけたりいつぽんの木は家族のごとし





白きひざ覗かせをみなが歩きくる紅葉ちらばる朝の小径を





昨年、11月から徒歩通勤を始めた。
職場まで約40分の距離である。
その40分の間で見たこと感じたことを詠んだ。

一首目、枯葉が光を浴びてきらきらと輝きながら落ちてゆく様を詠んだ。
落ち行く様も美しいものだ。

二首目、こうえふ=紅葉・黄葉、あをば=青葉。
枯れてゆく葉のなかにまだ緑色をしている葉をみつけた。
今月の五首のなかに選ばれた作品。

三首目、をみな=女。
歩いていると女性とすれ違うこともある。
紅葉で紅く染まった歩道にコートから見え隠れする白いひざが眩しかった。






これまで。地下鉄で通勤していたが、徒歩に変えてからいろんな刺激を受けるようになった。やはり、寒くても外へでないとだめだ。冷たい空気を感じる。同じ空気の中に、人や物が存在している。ビルや街路樹や歩道…みんな、この冷たい空気のなかに存在しているのだ。寒くても暑くても、少しだけでもいいから外の出て空気を浴びることが大切だと思う。
# by take04ex | 2011-03-15 11:42 | コスモス短歌会

コスモス 2011-2 その二集
※小島ゆかり 選



コーヒーが胃にしみわたるひとときは事務処理したる時より長し





ひとくちの熱きココアが胃袋にしむれば出づる大きためいき





散文のやうなをみなと定型詩のやうなをのこ 娘と息子は





新聞広告の審査・校閲・整理業務をしている。この日は、審査物件が多く、午前中の業務があっというまだった。昼食前に熱いコーヒーを一杯。じわ~っとゆっくり胃に染み渡る。肩の力も抜けてくるようだった。


一首目の続きとして詠んだもの。甘いものが欲しくなったので、今度はココアを飲んだ。
やはり、こんどは疲れ自体が抜けていくようだった。自然と大きなため息が漏れた。


早いもので、娘は11歳(小学5年生)、息子は9歳(小学3年生)になった。これくらいになると、個性が表にでてくるようだ。娘は、型にはまらない自由さをもち、息子はルールを重んじる堅実派。このさきどうなるか、楽しみだ。





自分では、自然詠が多いと思う。
だから、もっとバリエーションを増やしていきたい。
今回、初めて、職場詠に挑戦してみた。
なかなか歌にしにくい職場だが、
観察眼を鋭くして、
徐々に詠んでいきたいと思う。
# by take04ex | 2011-02-12 07:47 | コスモス短歌会

コスモス 2011-1 その二集
※岡崎康行 選


擦り切れしジーパンのやうな青空よギザギザ雲のぽつんと浮かんで



あをぞらに夕光はらむ雲ありて茜の色は誰ぬりたりや



ホームラン打ちし子のゑみ誇らしく監督の顔ほころびゆけり



をちかたに釜山をのぞむ砂浜にハングル文字の落書きありぬ





批評(十一月号の十首)

ぶつだんを家族みんなで買ひにゆき家族みんなで飾るしあはせ


「昭和」がブームになるこの頃、失われたもの失われつつあるものは映画や小説になるという特性を持つ。滅びゆくものはみな美しい。結句で仏壇屋の宣伝文句みたいになったが、百年先の人が読んでも解る、作者の現実のありのままを素直に詠んだ良い歌だ。その「対極」にある歌は寺山修司の「新しき仏壇買ひに行きしまま行方不明のおとうとと鳥」。





あけましておめでとうございます。
今年もいろんな場面を詠んでいきますので、
よろしくお願い致します。

今月は、作品四首と昨年11月号に掲載された作品の批評が掲載されました。
一首目、晴れた日の空をながめて浮かんだ作品。
二首目、夕光(ゆうかげ)が雲にあたった様子。
三首目、少年野球の試合の様子。
四首目、百道浜を散歩していたときに出くわした落書き。※「をちかた」=「遠方」の意

批評の方は、11月に発表したものを結社の先生が更に抽出し、批評して頂いたもの。
二人の先生から批評をいただいたが、総評のみ掲載することとします。





空を「布」と表現したものが何かの歌集にあったような気がする。一首目は、それを意識して作ったものである。しかし、ギザギザの形の雲のみ空に浮かんでいたのは事実で、擦り切れたジーパンという、ちょっとパンクな表現をした。

青空なのに雲がオレンジ色に光っている。まるで、誰かが雲にいたずら書きをしたかのようだった。

小学校低学年(四年生以下)の練習試合。小学三年生の息子が途中守備につき、出場。そして、ワンアウト一塁、二塁で打席に立った。カウントワンスリーからフルスイング!打球はライト前にワンバウンド。しかし、バウンドが高すぎてライトが後逸。足の速い息子は前の走者を追い越しそうになりながらもホームイン!1対3が4対3となり、大逆転!あの厳しい監督の表情がにこやかになった。

海岸を歩いていたら、ハングル文字の落書きがあった。この海のずっと向こう側には、朝鮮半島がある。文字は読めないが、ふるさとを思って書いたものなのだろうか。ふと、気になった。



批評については、本当に感謝感激です。
家族で仏壇やその他の仏具を買いに行ってみんなで飾ったときのことを詠んだもので、
ほのぼのとした雰囲気がつたわるようにひらがなを多用しました。
「カ音が明るく響き繰り返しも効いて」ともありました。
そういえば、そうかな?
という気がします。
この調子で作っていけばいいかなと、自信につながりました。
それから、「結句は別の表現があったかも」「結句で仏壇屋の宣伝文句みたいになったが」
とありました。
そういえば、そうだな。
と思います。
ちょっとベタだったなあ、と。
でも、そのときの気持ちを素直に表現できたと思っています。
別の言い方って、どんな表現が当てはまるだろうか…?!



# by take04ex | 2011-01-03 16:21 | コスモス短歌会

コスモス 2010-12 その二集
※奥村晃作 選


にんげんは便利さ追求せしもののヒトの機能はおとろへゆけり



かき氷あたまに乗せてシャンプーす摂氏三十六度の街で



ビル街の茜の空は置き土産われを襲ひしゲリラ豪雨の




倉本聡の原作のテレビドラマで、第2次大戦で戦死した日本兵が亡霊となって今の日本を見物にくるというものがあった。そのなかで、長渕剛が扮する隊長のセリフ「人間は豊かさと便利さを履き違えているのではないか?!」「便利さを求めるあげくに、ヒトは体を動かさなくなった」が、僕の心に突き刺さり、この一首目の歌ができた。

西日本新聞の夕刊に大きく写真つきで、かき氷を頭に乗せて髪を洗う美容師が紹介されていた。スッキリ、爽快だという。人の体は頭寒足熱。体温と同じくらいか、それ以上の気温のなかで生活するには、これくらいのことでもしないと、つりあわないだろう。

今や、ゲリラ豪雨と言われるようになった「夕立」。雨が去ったあと、ビルの間から見える空が朱色に輝いてきれいだった。ふいに襲ってくる雨は嫌だけど、そのあとの夕焼けに心が癒された。
# by take04ex | 2010-12-12 07:37 | コスモス短歌会

石鎚社報 11月号
「二十年ぶりの錬成会」




はつぴ着て錬成会に参加せり二十年ぶりの錬成会に



青春の日々を過ごしし錬成会あの頃の友ひとり来てをり



娘つれ友は甥姪つれてきて会に参加す奉仕者として



男われ 敬婦にまじりて奉仕せり さうめん流し、掃除、配膳



千切りの上に紫蘇の葉おいてゆく子らの笑顔を思ひ浮かべて



てるちやんは四歳なれど配膳のお手伝いせり小さきおててで



成就社でうどん食ぶれば力湧き頂上めざす元気ぞ得たる



新緑の森に抱かれ我が心あらはれ涙あふれてきたり



「なんまいだあ」「なんまいだあ」と叫ぶごとお山の息吹からだを巡る



頂上で「願ひ」叫べる会員の勇気に熱き拍手をおくる




錬成会は愛媛県の石鎚神社で行われる「石鎚神社青少年錬成会」のこと。
サマーキャンプのようなもので、大学生の頃、参加していた。
あれから、20数年…。
今年、たまたま特別休暇がとれて、娘と参加することにした。
娘は会員として、グループによる「村活動」に参加し、
僕は、奉仕者として敬神婦人会(敬婦)の方たちと運営の手伝いをした。
その、敬神婦人会のなかに当時、錬成会などで一緒だった友達が甥と姪を
連れて来ていた。
神職のなかにも当時の仲間たちがいるので、タイムスリップしたかのようだった。
もう錬成会は、二世の時代なんだなあと、しみじみと思った。
# by take04ex | 2010-12-12 07:33 | 石鎚山
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葉月拾伍と申します。心が動いた瞬間を言葉で捕らえ綴ります。(短歌)

by take04ex
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